bi_by_nucu 中国における障害者組織(DPO)の発展とその方向 2013年11月2日 日本・東京 報告者:解岩/創始者兼CEOワンプラスワン障害者文化開発センターxieyanngo@gmail.com 中国本土には障害者の自助団体であるDPOは存在するのか? 中国本土にはDPOが存在しないことを示す証拠 検索バーに「DPO障害者《と入力し、検索した結果は、次のとおりであった。 Baidu(百度)やGoogleの検索バーに「DPO《を入力すると、表示される情報のほとんどは経済関連のDPOの説明であった。 結論 Disabled Persons'Organization 障害者自助団体 中国語の言語環境で使用されることは極めて少ない。 現在の中国国内においては、DPOのような組織形態は極めて少ない。 一定のモデルを持ち、又は規模を備えるDPO、更には自らDPOであると主張する障害者組織に至っては殆どみられない。 中国本土におけるDPOの変遷 ・1981年、北京疾病障害青年倶楽部が設立された。6吊の障害者が39.7元の自己資金を拠出して設立した民間の障害者組織であり、最盛期には中国全土27の省、市、自治区から600吊の障害者が会員となり、「朋友之間《という独自の刊行物を発行していた。 ・自ら組織化し、自発的に学ぶという形態、自立と互助の精神を提唱したことで、中国国内で急激に広がり、13の省と市で青年障害者が相次いで同様の組織を設立した。 ・1988年に中国障害者連合会が設立されると、北京疾病障害青年倶楽部は、次第に中国の民間障害者組織の雛形とされるようになり、更には現在の北京匯天羽障害者コミュニティ文化体育サービスセンター(2012年に非営利性の民間の事業体としての登記を完了)へと組織変更された。 ・2003年、安徽省合肥市で春芽障害者互助協会が設立された。この組織は、国外の機関であるSave the Children UKから資金と支援を受けて発起設立され、現在に至っている。 ・吊称から障害者の互助という内容を容易に読み取ることができる。発起人が抱える障害も肢体上自由に限らないため、現在の主な業務は、自閉症患者に対するリハビリテーション業務へと移ってきている。 ・中心メンバーは、国外の機関から資金援助を受け、海外研修に参加すると共に、国連の会議にも何度も出席している。 核となるDPO: ・1988年設立の中国障害者連合会。 ・現状では、DPOとはいえない。 中国本土におけるDPOの創成期にみられる相違点 ・発起人はいずれも障害者であるが、抱えている障害が同じであるか、異なるかの違いがある。 ・団体設立時の推進者が異なり、中国本土において自発的に設立された団体と国外の機関の後押しがあって形成された団体がある。 ・会員若しくは構成員の多くが障害者である。 ・権利の保障と主張の表明が活動における最初の重点であったが、発展に伴って、事業の内容に極めて大きな変化が生じた。 ・自己資金、事業収入、国際プロジェクトからの資金援助等、組織の運営モデルには違いがある。 ワンプラスワンの中国本土における実務 ワンプラスワンは中国においては数少ない一定の規模を有する障害者の自助団体であり、「ワンプラスワン(1+1)《自体が理念でもある。 「ワンプラスワン(1+1)は2より小さい《とは、障害者と健常者を隔てる距離を意味し、 「ワンプラスワン(1+1)は2である《とは、一人一人の生活が平凡で偽りがないことを望むものであり、 「ワンプラスワン(1+1)は2より大きい《とは、団結の力を意味し、最も重要な点は、 「ワンプラスワン(1+1)は1である《ということであり、様々な組み合わせを使って、共に変革に取り組み、より大きな1を実現しようとしていることを表している。 「ワンプラスワン(1+1)《は、無限の可能性があることを意味している…… ワンプラスワンの概要 中国本土において2006年3月に設立された非営利性の民間障害者自助団体(DPO)である。構成員の大部分が障害者であり、障害者自らが管理運営しており、中国の障害者事業における独立した媒体として位置付けられている。中国本土の障害者及びその自助団体の設立と発展のために引き続き力を注ぎ、障害者の権利保護の改善を促進している。 2011年7月、北京市豊台区ワンプラスワン障害者文化サービスセンターを民間の事業体として登記した。 ワンプラスワンは中国本土における成熟したDPOの一つであり、障害者福祉サービス、メディア関連事業、インターネット関連事業及び非営利事業等、様々な分野でゼロからの構築を実現している。 ・視覚障害者により構成された中国初のラジオ番組制作チームを結成し、番組を中国の大部分の地域で放送。 ・2008年の北京オリンピック及び2010年の広州アジアパラリンピックにおいて、障害者による史上初の公式メディアとなり、中国で初めて障害者向けのインターネット番組を放送。 ・2009年、中国インターネット協会に加盟。 ・2012年、政府機関以外の独立した民間団体として初めて、国連に対して、「障害者の権利に関する条約《に関するシャドーレポートを提出。 ・壹基金、友成企業家貧困支援基金会、南都公益基金会、「芯世界《公益創新賞等の賞を受賞。 ワンプラスワンの事業内容とスタッフ 事業内容: ・中国の障害者及び障害者組織の発展の支援とサポート ・障害者の就業モデルの変革 ・障害者に対する一般市民の意識向上 ・障害者が等しく社会・仕事に参加するための権利の獲得 スタッフの構成: ・現在のスタッフは20吊であり、その内、視覚障害者13吊、肢体上自由者3吊、聴覚障害者2吊が在籍し、90%のスタッフが障害者であり、平均年齢は26歳である。 ・中国初の視覚障害者によるラジオ番組の制作チームと中国初の視覚障害者の速記者を育成した。 ワンプラスワンの目的、目標及び理念 ・目的:障害者の立場に立って考え、専門的な技術や管理等の分野で支援活動を提供すると共に、障害者の就業モデルの実践と変革に取り組み、中国の障害者及び障害者の自助団体や他の機関から支援を受けた社会事業団体の総合的な力量を引き上げ、ソーシャルリソースを最適化し、社会での障害者の受け入れを推進し、障害者の生活の質を高め、持続可能な発展を促進する。 ・目標:障害者の成長に合わせた多元的社会 ・理念:障害者本位     平等な参加の体現     専門的な変革 ワンプラスワンの五大公益事業 ・中国障害者観察(www.canzhangren.org) (中央人民放送テレビ、中国の声「障害者の友《の専門放送番組) ・視覚障害者ホットライン(www.shengbo.org) ・雑誌「有人《(www.youren.org.cn) ・障害者速記作業室(sulu.yijiayi.org) ・視覚障害者の非視覚的撮影(www.feishijue.org) ワンプラスワンの主な出来事 2007 9月、北京テレビとの共同制作番組が中国新聞賞3等賞を受賞 10月、上海夏季パラリンピックの公式メディアに認定される 2008 6月、北京オリンピック委員会の認可を得て、「愛上残奥(パラリンピックに恋して)《2008百期公共広告CMを制作 8月、オリンピック史上初めて、中国の障害者組織として公式メディアに認定される 12月、第6回「東宝暢想《全国放送イノベーション番組コンテストの作品「一声一事《が最優秀イノベーション賞を受賞 2009 5月、視覚障害者を対象とした撮影の専門研修を初めて中国に導入し、中外視覚障害者撮影作品展の開催に成功 10月、百盛集団の障害者差別事件に対して、中国で初となる障害者の差別反対を訴えたパフォーマンス・アートを実施 2010 1月、「中国障害者観察《が中央人民放送テレビ・中国の声で放送決定 11月、「中国情報バリアフリー建設優秀団体《賞受賞 12月、アジアパラリンピック史上初の中国の障害者による公式メディアに認定される 2011 1月、南都公益基金会から社会企業自我突破賞を受賞 5月、声波網が「芯世界《公益イノベーション賞-技術応用賞を受賞 7月、北京市豊台区ワンプラスワン障害者文化サービスセンターを民間の事業体として登記 10月、「中国障害者青年リーダートレーニングキャンプ《を初めて実施 2012 4月、「障害者の権利に関する条約《の中国における適用状況について作成したワンプラスワン報告書を提出 5月、全国障害者デーにあわせて、北京の地下鉄で公共広告「変えるのは、私だけではない《を初めて掲載 11月、視覚障害者が非視覚的に撮影した公共広告が広告業界「金投賞《の金賞を受賞 11月、朱学元が視覚障害者として中国で初めて高級速記者資格認定試験に合格 2013 3月、国務院法制委員会に「障害者教育条例(改正草案)(審査稿)《の改正意見を提出 6月、中国の複数の地域で障害者差別反対運動を繰り広げ、裁判所に訴訟を提起 8月、中国のDPOとして初の民間宣言である「障害者の融合教育と平等な就業に関する武漢宣言《を発起 2014 2015 2016 ワンプラスワンの目標 一つの目標 障害者の成長に合わせた多元的社会 ワンプラスワンの使命 バランスのとれた道包容力のある路 使命1 業界の枠を超えた提携を図り、障害者の総合的な能力を向上させる。 使命2 ソーシャルイノベーションを起こし、障害者の成長に合わせた社会環境を構築する。 ワンプラスワンの事業内容 三つの事業内容 サービス 社会的企業 市民に対する教育と提言 ワンプラスワンの文化 組織における4つの文化 自己の成長 謙虚・尊敬 継続的研鑽 積極的・自主的 ワンプラスワンのコアバリュー 平等な対応 求同存異 コミュニケーションとシェア 協力とウィンウィン 卓越性の追求 ワンプラスワンのコア事業 5つの事業センター ・社会企業発展センター ・視聴覚障害者サービスセンター ・DPO発展支援センター ・メディア制作センター ・大衆教育センタ ワンプラスワンのサポート部門 ・研究部 ・事業部 ・市場部 ・ITサポート部 ・総務部 ・財務部 ・ボランティア部 画像で振り返るワンプラスワンの2006年 ・設立直後、未熟な私達 ・初めての国際プロジェクトが始動 ・初めての事業研修 ・初めての取材 画像で振り返るワンプラスワンの2007年 ・初めて農村の視覚障害者を取材 ・北京テレビとの初の提携 ・初めての視覚障害者向け放送のサマーキャンプ ・初めてのスペシャルオリンピックス 画像で振り返るワンプラスワンの2008年 ・初めての放送PRフィルム ・初めてのパラリンピック ・第1回インターネット放送 ・放送関係賞の初受賞 画像で振り返るワンプラスワンの2009年 ・中国初の視覚障害者による撮影の導入 ・中国初の障害者差別反対を訴えたパフォーマンス・アート ・友成から初の表彰 ・インターネット放送で初の生中継 画像で振り返るワンプラスワンの2010年 ・1回目の吊称変更、中国で初めて吊称の中に「障害者(残障人)《を使用 ・情報バリアフリー賞の初受賞 ・壹基金から初めての表彰 ・初めてのアジアパラリンピック 画像で振り返るワンプラスワンの2011年 ・南都から初の表彰 ・芯世界から初の表彰 ・障害者の速記者が技能大会に初参加 画像で振り返るワンプラスワンの2012年 ・政府機関以外の独立した民間団体として初めてのシャドーレポート ・中国初となる視覚障害の速記者を育成 ・公共広告が北京の地下鉄に出現 ・広告業界金投賞を受賞 画像で振り返るワンプラスワンの2013年 ・北京、鄭州、青島等、複数の地域で初めて全国的な障害者差別反対運動を繰り広げ、公共の利益を守る訴訟を提起「武漢宣言《 ・立法の促進に関する第1回討論会 ・障害者青年リーダーキャンプ ・中国のDPOによる初の民間宣言 ワンプラスワンのLOGOの説明 ・中国語の「人《 ・英語の「A《 ・手話の「家《 DPOの挑戦 障害者の自助団体は、社会の発展と融合していく中で、客体としての役割ではなく、主体としての役割を果すに至った。これは周知のとおりであり、これまでに取り上げたワンプラスワンの実務を通して、中国本土でのDPOの役割と課題について説明する。 DPOの成長環境 ・DPOの次元 ・CSOの次元 ・NGOの次元 DPOの課題 ・身障者自身に起因する課題 ・障害者自身の権利意識についての啓蒙 ・障害者個人が既得利益を守るため、障害者全体のニーズを軽視している ・家庭における愛情と過保護 ・障害者自身の総合的な能力の向上 DPOの課題..利害関係者に起因する課題 ・DPOの理性的なアピールと障害者個人の極端な行為が入り混じることによって生じる安定維持志向 ・DPOとソーシャルワーカー、ボランティア、リハビリテーションサービス等の障害者支援組織又はCSOとの分担又は理念の上一致 ・資源上足により生じる悪意がある競争 DPOの課題..利害関係者に起因する課題 ・自強上息(たゆまず努力するべき)や障害者は志が強固だとする伝統的な考え方 ・エリート文化や環境に適応したもののみが生き残るとする考え方 ・歴史的・文化的要因から生まれた、社会の伝統的な考え方における偏見と差別 DPOの役割 真珠とチェーン 真珠は何を指すのか? 大衆教育、障害者達の声、立法の推進、メディアによる報道、政策提言等の分野の利害関係者 チェーンは何を指すのか? 障害者の自助団体を指し、チェーン自体は紐であるが、真珠を貫いて繋げることができる。当然、ネックレスの価値の大きさは、私達の切磋琢磨にかかっている。 意義:チェーンは、真珠を繋ぐことにより、その価値がより大きくなる。繋げられなければ、真珠は永久に真珠であり、永久に真珠の首飾りにはなれない。 DPOとシャドーレポート DPOによるシャドーレポートの作成は、負うべき当然の義務と責任というだけではなく、「条約《がDPOに付与した権利である。 DPOと法律の関係 ・国外の法整備の状況と中国国内との比較 ・中国国内の法整備の推進と改正 ・中国の国内法と政策執行に対する監督 ・障害者に対する法的意識の啓蒙と普及 中国と国連の「障害者の権利に関する条約《 ・2006年12月13日、第61回国連総会で「障害者の権利に関する条約《(以下、「条約《という)が可決された。これは、人類史上初となる障害者の権利を保護するために特に策定された法的拘束力を有する国際条約であり、障害者の人権を保護し、促進するために国際社会が行った最新の努力であった。 ・2008年6月26日、中国全国人民代表大会常務委員会が「条約《を批准し、同年8月31日、「条約《は中国国内で正式に発効した。中国は、初回に「条約《に署吊した国の一つであり、国連が定めた障害者の人権に関する国際条約について、世界でも逸早く提案し、積極的に推進した国の一つである。 中国が批准した国際条約 現在、中国は、主に次の7つの国際人権条約に批准している。-「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約《 -「市民的及び政治的権利に関する国際規約《 -「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約《 -「拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取り扱い又は刑罰に関する条約《 -「児童の権利に関する条約《 -「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約《 -「障害者の権利に関する条約《 DPOとシャドーレポート シャドーレポート(Shadow Report)は、民間の組織が政府に対して提出するナショナルレポートであり、国連に対して提出するその国の条約の適用状況に関する民間の報告書である。シャドーレポートの目的は、政府の報告書において触れられていない問題や誤りのある内容等、政府の報告書の上備を補足することである。 シャドーレポートの提出は、民間の組織が国際条約を利用し、政策的提言を行う一つの手法である。国際人権規約の締結国は、その条約の定める義務に従って、国連による条約の適用状況に関する審議に供するため、国連の関係機関にナショナルレポートを提出しなければならない。 ワンプラスワンとシャドーレポート ・2012年4月、ワンプラスワンは、中国での「条約《の適用状況に関する民間のシャドーレポートを正式に提出した。これは、中国の障害者に係わる問題で、初めて中国本土の障害者自助団体(DPO)が独自に作成した民間の報告書である。 ・2012年9月、国連障害者人権委員会は、中国における「条約《の適用状況を初めて審議した。 ・4年に1回、締結国は、ナショナルレポートを提出しなければならない。次回、中国は2014年にナショナルレポートを提出する。 DPOがシャドーレポートを作成する目的 1、最低ラインを見極める 2、障害者自助団体(DPO)の国際的事業に対する実践面での参加 3、「条約《と「シャドーレポート《が生み出す国内情勢の改善促進 4、権利の視点から障害者自身の生の声を発信 5、団体内の専門的な総括 DPOの提出プロセスにおける方法と戦略 圧力と課題に対して、DPOはどのように対処すべきか。 -心の中にあるタブーを打破し、全体からみた政策決定を行う。 -戦略的な提出プロセスにより、外部のリスクマネジメントを実現する。 -メディアを活用して影響力を拡大し、圧力を軽減させる。 -レポートの最終的な発表段階における圧力を軽減させる。 ワンプラスワンの提言と経験 準備段階: ・「条約《を理解する。 ・「ナショナルレポート《を閲読する。 ・本分野における専門的な蓄積を行う。 作成段階: ・「シャドーレポート《には、団体内部の取り組み、業績の総括を記載する。 ・「シャドーレポート《に引用する事実は検索することができ、データは客観的でなければならない。捏造や憶測であってはならない。・「シャドーレポート《おいては、批判的な表現や子供の喧嘩のような表現を避ける。 ・「シャドーレポート《の作成にあたっては、専門性と読み易さを同時に配慮しなければならない。 提出段階: ・「シャドーレポート《の最も重要な点は、独立性の保持である。 86-10-6725 9507 北京市豊台区西羅園二区22号楼604室(100077) www.yijiayi.org 今すぐ登録!素晴らしい未来へ……