障害の社会モデルと集団的責任論 by 川越敏司 1.障害の社会モデルへの疑問 ・果たして社会は障害者に対して合理的配慮を提供する義務があるのか否か?  ・そもそも社会に責任があるとはどういうことか? 社会の成員の誰がどの程度の責任を負っているのか?また、負わなければならないのか? 2.合理的配慮の根拠としての責任に基づく平等論 ・資源の平等論も機会の平等論も不遇な人々には社会が補償を行なうべきだと仮定。 ・しかし、なぜ社会にその不平等を是正する義務があるのか?  3.集団的責任としての合理的配慮 ・個人に責任を問う時、その行為者能力と意図・動機が問題になる ・集団各成員とは区別して、集団そのものは行為者になりうるか? 個人の意図・動機とは区別された集団の意図・動機は存在するか? 個人には還元できない責任を問えるか? 4.集団的責任論の基本論点 ・あくまで個人的責任の総和(共同的責任)以上のものとしての集団的責任が問題になる ・また共同的責任の場合、集団による作為が問題になっているのに対し、集団的責任が問題になるのは「~しない」という不作為の場合である ・貢献的落ち度がない場合、つまり、個人は集団に属しているだけで、直接手を下しているわけではない場合の責任論としての集団的責任論は成立するか? ・情報の非対称性の問題 5.協調問題としての合理的配慮 ・協調問題には、一般に複数の均衡が存在する ・協調の失敗に対して、それを引き起こした集団に責任を問うことは道徳的に妥当か? ・「間違った」確信に動かされた人々に集団的責任を問うことができるか? 6.アファーマティブ・アクションの経済的帰結 ・アファーマティブ・アクションの実施は必ずしも非効率な結果を導くわけではなく、むしろ社会的な効率性を増大させる可能性すら存在する ・合理的配慮の提供義務を、社会の責任としてではなく、社会や組織の協調の失敗を解消する適切な制度を設計する問題の解答として提示していくことが必要なのではないか?