日本における障害者権利条約の実施と市民社会 障害者政策委員会の役割を中心に 2016年2月21日 静岡県立大学教授 内閣府障害者政策委員会委員長 石川 准 2 障害者政策委員会の位置づけ ・内閣府に設置された審議会 ・8条委員会に相当する機関 3 障害者政策委員会の役割 ・障害者基本法に基づく役割 ・障害者差別解消法に基づく役割 ・障害者権利条約の国内監視機関としての役割 4 障害者基本法に基づく役割 ・障害者基本計画の策定にあたり、政策委員会は調査審議し、意見を述べる ・障害者基本計画の実施状況を監視し、必要があるときは内閣に勧告を示す ・内閣は上記勧告に基づいて実施した施策について政策委員会に報告しなければならない 5 障害者政策委員会の組織 ・政策委員会の委員は30人以内 ・内閣総理大臣が委員を任命する ・内閣総理大臣は、任命にあたっては政策委員会が様々な障害者の意見を聞き、障害者の実情を踏まえた調査審議を行えるよう、考慮しなければならない 6 障害者政策委員会の運営 ・必要があるときは、政策委員会は、関係行政機関に資料の提出、意見の表明、説明その他を求めることができる ・必要があるときは、政策委員会は、その他の者に対しても協力を依頼することができる(参考人など) 7 障害者差別解消法に基づく役割 ・内閣が差別解消法の基本方針を策定する際に、政策委員会は内閣に対し意見を述べなければならない 8 政策委員会の活動実績 第1期 2012年7月〜2014年4月 ・第1回・第7回:第3次障害者基本計画の策定にあたっての意見出し ・第8回・第12回:障害者差別解消法基本方針への意見出し 9 政策委員会の活動実績 第2期 2014年9月〜 ・第13回〜第18回:障害者差別解消法基本方針への意見出し ・第19回〜第28回:第3次障害者基本計画に基づく監視・障害者権利条約に基づく監視 ・第26回〜第28回:権利条約第1回政府報告への意見出しおよび報告書への監視結果の反映 10 差別解消法基本方針への意見出しに際しての政策委員会の考え方 ・権利条約と差別解消法の整合性を高めることもまた基本方針の重要な役割 ・本人からの意志の表明がない場合でも、当該障害者が社会的障壁の除去を必要としていることが明白である場合には、建設的対話を働きかけるなど、自主的な配慮に努めることが望ましい。 11 (図)基本方針の役割@ 障害者差別解消法  ↓ 基本方針  ↓ 対応要領 対応指針 12 (図)基本方針の役割A 障害者権利条約  ↑ 基本方針  補充的解釈  ↑ 障害者差別解消法 13 補充的解釈(1) ・不当な差別的取扱いの基本的な考え方 ・法は、障害者に対して、正当な理由なく、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否する又は提供に当たって場所・時間帯などを制限する、障害者でない者に対しては付さない条件を付けることなどにより、障害者の権利利益を侵害することを禁止している。 14 補充的解釈(2) ・合理的配慮の提供における意思の表明についての考え方 ・本人からの意志の表明がない場合でも、当該障害者が社会的障壁の除去を必要としていることが明白である場合には、建設的対話を働きかけるなど、自主的な配慮に努めることが望ましい。 15 補充的解釈(3) ・環境整備の二つの機能 ・環境整備には二つの機能がある ・環境整備の充実により社会的障壁が削減され、合理的配慮を必要としない場面や人が増える ・環境整備の充実により、より良く合理的配慮が提供できる 16 補充的解釈(4) ・合理的配慮から環境整備へ ・複数の人が求める合理的配慮および継続的に提供する合理的配慮については環境整備とすることが望ましい 17 補充的解釈(5) ・民間委託 ・行政機関が民間に事業を委託する場合は、合理的配慮の提供を契約条件に含めるべきである 18 差別解消法の波及的効果 ・立法府(衆議院・参議院・国立国会図書館)が対応要領を策定 ・多くの地方公共団体が対応要領を策定(公立大学を含む)! 19 国内監視の課題 ・制度的・機能的独立性の確保 ・政策委員会でできることは、基本計画に基づく監視を通じて権利条約の実施を監視することのみ ・障害者基本法および障害者基本計画に基づく施策以外にも、障害者の生活に関わる施策がある ・しかし、それは政策委員会の監視の範囲外となる  ●例)介護保険法に基づく施策 ・立法府・司法府・地方公共団体は政策委員会による監視の外(これらは今後の課題) 20 政府報告への監視結果の反映(1) ・誠実な政府報告が、良い政府報告である!(ロン・マッカラム前権利委員会委員長の参考人意見) ・政府報告の付属資料として政策委員会の監視結果のまとめを添付することになった ・政府報告本文に政策委員会からの重要な指摘を盛り込むことができた 21 政府報告への監視結果の反映(2) ・8テーマに関し、政府報告に政策委員会の意見を含めた ・第6条 障害のある女子 ・第12条 法律の前にひとしく認められる権利 ・第14条 身体の自由及び安全 ・第19条 自立した生活及び地域社会への包容 ・第21条 表現及び意見の自由並びに情報の利用の機会 ・第24条 教育 ・第27条 労働及び雇用 ・第31条 統計及び資料の収集 22 委員長としての考え方 ・政策委員会は市民社会と政府のかけ橋 ・建設的対話を重視