震災のハイチと経験共有して 大学教員 長瀬 修 (横浜市港南区 54)  丸2年を迎える東日本大震災の10倍以上の犠牲者を出した災害を想像できるだろうか。 2010年1月の大地震で約32万人が死亡したカリブ海のハイチを訪問した。西半球で 最も貧しいとされるハイチを大災害が襲い、さらにコレラが発生して6500人以上が命 を落とした。  日本を含む世界は支援に立ち上がったが、震災前から貧困で脆弱な社会基盤しかないハ イチの再建が非常に困難なことを現地で実感した。3年を過ぎた今もテントで暮らす被災 者が35万人以上いる。だが、日本のNGO「難民を助ける会」の障害者支援の活動現場 に行ったら、パートナーであるハイチのリーダーたちは未来を切り開く意欲に満ちていた。  まさにハイチをはじめとする世界の貧困を減らすための「ミレニアム開発目標」に国際 社会は取り組んでおり、次の開発目標策定の議論が始まっている。この取り組みに日本が 積極的に参加するのは当然だ。東日本大震災から私たちが得た教訓を世界と共有する貴重 な機会である。  東日本大震災の被災地の障害者は死亡率が住民全体の2倍というデータが示すように、 災害は社会の課題を丸裸にする。ハイチと日本の経験を貧困や差別のない世界づくりのた めに共有することが大切である。