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Research on Economy and Disability
学術創成 総合社会科学としての
社会・経済における障害の研究

〒113-0033
東京都文京区本郷7-3-1
東京大学大学院経済学研究科 READ
研究代表者 松井彰彦
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プロジェクトの概要

 日本は均質な構成員からなる社会である、といわれる。ところがそこには、 650万人の障害者を初めとした、「ふつうの日本人」になれない人々は登場しない。

 本研究プロジェクトは、障害学に経済学的な視点・分析手法を導入することで、社会・経済における障害を総合的に研究する新分野を拓くことを目的としている。障害学 (disability studies)は 1970年代のイギリスで始まり、政治学、歴史学、ならびに社会学の一分野として学際的に研究が進められてきた。特色として、障害を身体的障害 (impairment)と社会的障害 (disability)に区別し、後者を強調する点が挙げられる。

 障害問題を理解し対策を模索するうえで、経済学的な視点は不可欠である。経済学の理論は、個々人のインセンティブを出発点に、人々の相互依存関係を分析し、内生的な産物として慣習・制度を捉える。このとき特に、ゲーム理論的な分析道具が有効である。この理論的手法により、社会的障害をひとつの内生的制度として見なして分析することができる。また、障害問題対策としての政策を考えるとき、個人のインセンティブを考慮することで実効的な政策を追求できる。

 障害問題のより社会的な側面 (特に国内外の事例 )については、史学・制度研究・計量分析・経済実験などの実証的な研究によりアプローチする。社会経済モデルが両側面を繋ぐ橋となり、当該モデルの精緻化を通じて、本研究が目的とする新規の社会科学、障害の研究が確立される。

 本研究の長期的対象は現在障害者と見なされる人々のみに留まらない。社会的障害は気付かれぬままに発生し、「ふつうの日本人」として暮らす人にも不都合をもたらしているおそれがある。障害の研究は、我々全員にとってより住み良い社会を志向するものでもあるだろう。