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Research on Economy and Disability
学術創成 総合社会科学としての
社会・経済における障害の研究

〒113-0033
東京都文京区本郷7-3-1
東京大学大学院経済学研究科 READ
研究代表者 松井彰彦
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2011年4月25日改訂

2011年3月18日

避難所などでの障害がある人への基礎的な対応
あなたのまわりにこんな方がいたら

被災地のみなさまに改めてお見舞いを申し上げます。

とくに、障害のある方々が直面されているであろう困難に READ メンバー一同、心を痛めております。
DPI女性障害者ネットワーク様より大切な情報をいただきましたので、許可を得て下記に転載させていただきます。

DPI女性障害者ネットワーク
http://dpiwomen.blogspot.com/
上記ウェブサイトで関連情報を随時更新しています。
避難所などでの障害がある人への基礎的な対応
あなたのまわりにこんな方がいたら
  • 肢体不自由
  • 視力障がい
  • 聴覚障がい
  • 知的障がい
  • 精神障がい
  • 内部障がい

・障害がある人は、「かわいそう」な人や、自分では何も判断ができない人ではありません。その人の年齢にふさわしい態度で接して下さい。

・障害がある被災者は、一般的な情報があっても、危険に対して理解・判断しにくく、危険に対して適切な行動が取りにくい状況に置かれがちです。

・外からみても分からない障害もあります。不思議と思われる行動をしている人がいたら、正面から「困ったことはないですか」等、話しかけて下さい。そして、その人の希望とペースに合わせた手助けをして下さい。

・障害のある女性は、ふだんから情報が届きにくく、声をあげることがさらに難しい、ニーズを出しにくい立場におかれています。

・介助や補助が必要な人や呼吸器をつけている人などのなかでも、特に女性は、生きる優先順位を自分でも低めがちです。平時の社会でも、人工呼吸器の装着が必要になった場合、女性のほうが男性より、呼吸器をつけて生きることを選ぶ人の割合が低いというデータがあります。

・女性の身の回りの介助、とくに着替え・トイレ・入浴は、女性による支援を徹底して下さい。

(1) 障害のある人に共通して望まれる支援
~施設内は、できるだけバリアフリーにし、見やすい案内標識等を表示する~
  1. 移動しやすい環境の整備(段差の解消、通路の幅の確保、障害物を置かない等)が必要。
  2. 車いすが通れる通路(直線で)の幅は90cm 以上必要。
  3. 案内所・物資配布所・トイレ等の表示は、大きい表示板・色別テープなどでわかりやすく。
  4. 集団生活に適応しにくい人々には二次的避難所を設ける。
  5. できるだけその人の事情が分かっている人と共に過ごすことができるような配慮。
  6. 盲導犬、聴導犬、介助犬は、使用者の移動や生活にとって、必要なので、使用者とともに避難し、避難所内で一緒にすごし、必要な食事や給水を受けられるようにする。
  7. 混乱の中で支援が効果的に実行できるよう、障害当事者及び支援者(介助/介護者)は分かりやすい名札などで識別・表示も考えられる。ただし表示を希望しない人へは強要しないように。
  8. 情報伝達機器のうち、テレビは「字幕付き」、電話は「ファックス付き」を設置する。
  9. トイレには「手すり」等を取り付ける。
  10. 大人用紙オムツ、尿取りパットは、各サイズ別に多く備える。
  11. 非常食として「おかゆ(パック用)」を用意する。またトロミ剤、ストローを用意する。
  12. 簡易な医療器具を設置する。(酸素吸入器及びボンベを設置する)
  13. 避難生活のなかでのトイレや着替え等女性のプライバシーを確保し、安全対策をとることが必要。
  14. 避難生活のなかで性暴力がおこるおそれがあり、とくに障害をもつ女性は暴力から逃れるのが困難なことがある。性暴力の防止対策、被害があった場合の相談・支援体制を用意する。
(2)障がい別に必要な支援者、支援器具等
  1. 視覚障害者...介護者(ヘルパー等)、白杖
  2. 聴覚障害者...手話通訳者、筆記者、手旗(黄色)、補聴器、筆記具
  3. 精神障害者...当事者をよく知る友人、知人、介護者(ヘルパー等)、二次的避難所、飲料水
  4. 知的障害者...介護者(ヘルパー等)、二次的避難所
  5. 肢体不自由者...介護者(ヘルパー等)、車いす、歩行器、つえ、車いす用トイレ、ポータブルトイレ、カーテン、ベッド(※ カーテン、ベッドは特にトイレ介助に必要)
  6. 高齢者(認知症・寝たきり)...介護者(ヘルパー等)、歩行器、呼び出しベル、杖、ポータブルトイレ、カーテン、ベッド(※ カーテン、ベッドは特にトイレ介助に必要)
  7. 心臓病・喘息患者等...加湿器、マスク、AED(自動体外式除細動器)、のど湿布薬
  8. 透析・人工肛門患者等...二次的避難所、透析可能施設の情報提供と移送
    参考URL「日本透析医会災害情報ネットワーク」透析の受け入れ施設の状況。 http://www.saigai-touseki.net/
  9. 1型糖尿病患者等...インスリン製剤、ポンプ用カニューレ、シリンジ、ペン型注射器、注射針、血糖自己測定器、測定チップ、穿刺器具、ブドウ糖、砂糖、アルコール消毒綿
    参考URL「糖尿病がよくわかるDMTOWN」 http://www.dm-town.com/
  10. 妊婦...看護師又は助産婦、消毒済み布(ガーゼ他) 11. 乳幼児...保育士、空気清浄機、加湿器、哺乳瓶、粉ミルク、離乳食(ベビーフード)、乳幼児用オムツ、乳幼児用歩行器
  11. 必要な介助者がいない場合、派遣要請ができるシステムを早急に設ける。
◆障害についての具体的なこと

障害ごとに書いていますが、同じ障害であっても、障害の状況やその時の体調によって、必要な支援は一様ではありません。そして、障害のある人も、 人によって、個性、言語、国籍、セクシュアリティ、宗教など、一人ひとり異異なっています。そのことを十分に念頭において下さい。

① 肢体不自由のある人
  • *移動手段を車いすにしている人たちも多く移動に制約が生じることを理解すること
  • *電気が止まった場合、エレベーターが止まったり、電動車いすの充電に問題が生じたり、人工呼吸器に問題が生じたりするため、それらを必要としていない人以上に生活に大きな制約を受ける。そのため、停電の影響が大きく、不安感も大きい。
  • *日常生活に介助をいれている人は、介助者の交通手段がたたれることで、介助者が確保できなくなる恐れもあり、不安が大きい
  • *移動を介助する時は、車いすも歩行も、段差やでこぼこ、傾斜に注意すること
  • *歩行の手助けは、手をつなぐ、腰に手を回す、ベルトをつかむなどの方法がありますが、どうするのが良いかは、直接、本人に尋ねてください。
② 視覚障害のある人
  • *視覚からの情報が得られないため、読み書きや慣れない場所での歩行が困難、命の危険にさらされることが少なくない。避難や移動のおりに取り残されることのないように配慮が必要。
  • *歩行を手伝う人の腕につかまり、段差の上り下り等を言葉で説明してもらいながら歩けば、安全に移動できる。
  • *言葉で分かりにくい場合は、目的のものに手で触れると理解しやすい。
  • *一見不自由がないようでも、色覚に特性がある、視野狭窄、まぶしい所や暗い所が見えにくい等、弱視の人もいることを理解する。
③ 聴覚・言語障害のある人
 ☆ 聴覚障害のある人
  • *まず、音情報を得られていない状態であることを理解すること。放送が流れるなどしても伝わらない。したがって、音情報はかならず文字や掲示でも伝えること。
  • *音情報については、個別に文字や掲示を見せて、きちんと伝わっているか確かめること。
  • *コミュニケーションの方法は手話、筆談等がある。口のかたちでは言葉が正確に伝わらないだけでなく強い疲労を招くことを十分に認識し、口のかたちに依存せずに、必ず、手話か筆談を。どちらかの人または双方が手話ができない場合も、筆談でやりとりできる。
  • *筆談は、たくさんのことを長い文章で伝えようとせずに、短い文章で伝わりやすく書くこと。
 ☆ 難聴の高齢者
  • *一度に大量の情報を伝えようとせず、ゆっくりと一言ずつはっきり話す/筆談する。
 ☆ 言語障害のある人
  • *言語障害で相手が言っていることが聞き取れない場合は、中途半端な返事はせず、分からない時ははっきりその旨を伝える。相手が言っていることを聞き取れないことは悪いことではない。
④ 知的障害のある人
  • *言語・記憶・抽象的思考等が苦手だったり、社会の仕組みや流れに上手に適応しにくい人たちがいることを理解する。
  • *自閉傾向の人は他者との関係について苦手だったり、特定のものに強い関心を示すことがある。話しかけて伝わりにくい場合は、ゆっくり話したり、身振り手振りや絵を書く、実物を見せる等すれば理解しやすい。
⑤ 精神障害のある人
  • *見た目ではわかりづらい障害を正しく理解すること。
  • *睡眠障害のある人や、夜中に落ち着かない人もいる。そのため、昼夜逆転して昼間は寝てしまうことがある。疲れやすさから休息が多く必要な人もいる。
  • *食事や対人関係等、日常生活や社会生活に著しい制限を受けていることを理解する。
  • *常時使用している処方薬があり、それらの確保を迅速にできるようにする。薬の副作用から水を多く飲む必要がある人もいる。薬の足りない状況からは病状の悪化も懸念されるので、当事者が安心、信頼して話のできる人や休める場所の確保が重要。
⑥ 難病、慢性疾患のある人
  • *状態によっては健康そうに見えることがありますが、体調に波があり体力的な制限があるので、様々なことについてその人のコンディションとペースに対応する。
  • *常時使用している処方薬があり、それらの確保をできるようにする。
  • *日常的な医療行為として、たとえば、インスリンを継続的かつ確実に入れられる状況を必要とするので、避難所に多目的スペース(二次的避難所)等があれば周知し、なければ作る。
参加と支援を! 福島・宮城・岩手の被災障害者支援センターやJDF等と連携して活動中
東北関東大震災(東北地方太平洋沖地震)障害者救援本部
ブログ: http://shinsai-syougaisya.blogspot.com/
クレジットカードからの寄付窓口 http://www.dpi-japan.org/bokin_k/dpijp.html
【代 表】 中西 正司(全国自立生活センター協議会)
【副代表】 牧口 一二(ゆめ風基金)
<東京事務局>全国自立生活センター協議会(JIL)内
〒192-0046 東京都八王子市明神町4-11-11シルクヒルズ大塚1F
TEL: 042-631-6620 (救援本部専用)FAX:042-660-7746
<大阪事務局>NPO法人 ゆめ風基金
〒533-0033 大阪市東淀川区東中島1-14-1
TEL/06-6324-7702 FAX/06-6321-5662
メール: yumekaze@nifty.com
サイト: http://homepage3.nifty.com/yumekaze/
ブログ(東日本大地震緊急ニュース) http://yumekaze21.blog39.fc2.com/

DPI女性障害者ネットワーク  2011年4月25日版
東京都千代田区神田錦町3-11-8-5F
メール: dpiwomen@gmail.com
ブログ: http://dpiwomen.blogspot.com/
サイト: http://dpiwomennet.choumusubi.com/

これって、避難所じゃなくても、ふだんから大切なこと。そしてこれからの再建に活かしたい。そんな思いをこめて、ご意見や情報をいただきながら、時々改定しています。どうぞよろしく!

「あなたのまわりにこんな方がいたら-避難所などでの障害がある人への基礎的な対応」
  プリントアウト版はこちらから入手できます