2018年3月14日

災害が発生、そのとき障害者は

丹羽太一

身体に障害がある方の避難
市町村の役割

市町村は地域防災計画を作成し、要配慮者に防災上必要な手立てを実施するように努めなければなりません。また、避難行動要支援者名簿を作成しなければなりません。

災害対策基本法では「市町村の責務」として「当該市町村の地域に係る防災に関する計画を作成し、及び法令に基づきこれを実施する責務」を有します。(災害対策基本法(以下同)第五条)
具体的には「当該市町村の地域に係る地域防災計画を作成」します。(第十六条)
その施策において、「高齢者、障害者、乳幼児その他の特に配慮を要する者(以下「要配慮者」という。)に対する防災上必要な措置に関する事項」の実施に努めなければなりません。(第八条)
平成25年6月の災害対策基本法の一部改正により、高齢者、障害者、乳幼児等の防災施策において特に配慮を要する方(要配慮者)のうち、災害発生時の避難等に特に支援を要する方の名簿(避難行動要支援者名簿)の作成を義務付けること等が規定されました。

地域防災計画

市町村地域防災計画は市町村防災会議(または市町村長)で作成し、毎年検討、必要なら修正を加えなければなりません。

市町村の地域防災計画は、「市町村防災会議(市町村防災会議を設置しない市町村にあつては、当該市町村の市町村長)は、防災基本計画に基づき、当該市町村の地域に係る市町村地域防災計画を作成」し、毎年これに検討を加え、必要があればこれを修正しなければなりません。(第四十二条)

避難行動要支援者名簿

市町村長は、避難支援を行うために、市町村に住む避難行動要支援者を把握し、避難行動要支援者名簿を作成しておかなければなりません。名簿は内部で共有し、本人の同意がある場合は避難支援等関係者に名簿情報を提供できます。災害時には避難支援等関係者に名簿情報を提供することができます。ただし、個人情報は保護されなければなりません。

市町村長は、地域防災計画で考慮すべき「要配慮者」の避難行動に関して、「当該市町村に居住する要配慮者のうち、災害が発生し、又は災害が発生するおそれがある場合に自ら避難することが困難な者であつて、その円滑かつ迅速な避難の確保を図るため特に支援を要するもの(以下「避難行動要支援者」という。)の把握に努めるとともに、地域防災計画の定めるところにより、避難行動要支援者について避難の支援、安否の確認その他の避難行動要支援者の生命又は身体を災害から保護するために必要な措置(以下「避難支援等」という。)を実施するための基礎とする名簿(以下この条及び次条第一項において「避難行動要支援者名簿」という。)を作成」しておかなければなりません。(第四十九条の十)

—内閣府は「 避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針」(平成25年8月)を作成しています。

要配慮者に関する情報は、「特定された利用の目的以外の目的のために内部で利用する」ことができます。(第四十九条の十の3)
特に、「避難支援等の実施に必要な限度で、避難行動要支援者名簿に記載し、又は記録された情報(以下「名簿情報」という。)を、「その保有に当たつて特定された利用の目的以外の目的のために内部で利用する」ことができます。(第四十九条の十一)
「本人(当該名簿情報によつて識別される特定の個人)の同意」が得られる場合は「消防機関、都道府県警察、民生委員法に定める民生委員、社会福祉法に規定する市町村社会福祉協議会、自主防災組織その他の避難支援等の実施に携わる関係者(「避難支援等関係者」)に対し、名簿情報を提供」します。(第四十九条の十一の2)
「災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において、避難行動要支援者の生命又は身体を災害から保護するために特に必要がある」ときは、「避難支援等の実施に必要」ならば、「避難支援等関係者その他の者に対し、名簿情報を提供することができ」ます。(第四十九条の十一の3)
このとき、地域防災計画の定めるところにより、「名簿情報の提供を受ける者」から「名簿情報の漏えい」がないよう「必要な措置を講ずるよう」求める、「名簿情報に係る避難行動要支援者及び第三者の権利利益を保護するために必要な措置を講ずるよう」努めなければなりません。(第四十九条の十二)
また、「正当な理由がなく、当該名簿情報に係る避難行動要支援者に関して知り得た秘密」を漏らすことはできません。(第四十九条の十三)

質疑によってわかったこと

避難行動要支援者名簿について、基本的に自治体は身体障害者手帳所持者など、すでに把握している高齢者、障害者、乳幼児などを対象に作成しています。そのうえで、自ら災害時に支援を望む方々に関して、申請してもらって登録する申請式の名簿も作成を進めています。ただし、申請の呼びかけが必要な住民全てに行き渡るのはなかなか難しく、申請者の数は対象者の数に比べまだ低いのが現状です。
また、防災についての広報には力を入れているものの、障害者の福祉避難所などを事前に確保していない場合は、障害者が利用できる避難場所をあらかじめ知っておくことが難しこともあります。
災害発生時には、避難行動要支援者名簿をもとに安否確認や、車いすなどで避難が困難な場合の避難支援を行うことになりますが、状況によっては支援者の確保も容易ではありません。また、視覚や聴覚に障害がある場合には、避難や救援物資などの情報が得にくいこともあります。
避難所についても、特に通常の避難所でバリアフリー化が十分でない場合、車いすなどで使える避難所を探して転々とすることも多く、また、発達障害などで落ち着ける居場所が無いこともあります。
ヘルパーが必要な高齢者や障害者は、ボランティアを頼るしかない場合、生活が困難になることも考えられます。特に医療的ケアが必要な場合などは、事前に個別の支援計画を作成することが必要です。

個別計画

内閣府の指針 では、避難行動要支援者名簿の作成に合わせて個別計画の策定を進めることが求められています。市町村が個別に避難支援が必要な方と具体的な打合せを行いながら、支援する関係者などと連携して、支援者、避難所、避難方法、情報伝達方法、避難誘導、避難所での生活支援まで、具体的な支援方法について定めることが必要です。

避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針」では、「災害時の避難支援等を実効性のあるものとするため、全体計画に加え、避難行動要支援者名簿の作成に合わせて、平常時から、個別計画の策定を進めることが適切」として個別計画の策定を求めています。「その際には、地域の特性や実情を踏まえつつ、名簿情報に基づき、市町村が個別に避難行動要支援者と具体的な打合せを行いながら、個別計画を策定する」ことが望ましいとされています。
個別計画の策定にあたって、「民生委員や社会福祉協議会、自主防災組織や自治会、福祉事業者等に、避難行動要支援者と避難支援等関係者の打合せの調整、避難支援等関係者間の役割分担の調整等を行うコーディネーターとしての協力を得て、それらの者と連携しつつ、一人一人の個別計画の作成内容や進捗状況、フォローアップ状況等を把握し、実効性のある避難支援等がなされるよう、個別計画の策定を進め」、「また、平常時から避難行動要支援者と避難支援等関係者が、避難支援等の具体的な支援方法について入念に打合せるよう、避難支援等関係者に協力を求め」ます。「避難行動要支援者を個別に訪問し、本人と具体的な避難支援等の方法について打合せ、市町村や避難支援等関係者間で避難支援等に必要な情報を共有できるよう、避難行動要支援者名簿に記載されている情報など避難行動要支援者情報を記録」します。避難行動要支援者と避難支援等関係者のマッチングでは「一人一人の避難行動要支援者について、できる限り複数の避難支援等関係者が相互に補完し合いながら避難支援に当たり」、「一人の避難支援等関係者に役割が集中しないよう、避難支援等関係者となる者の年齢や特性を配慮しつつ適切な役割分担を行う」ことが必要とされています。ここでも「個人情報に対する配慮」が必要です。
—「 避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針」(平成25年8月)内閣府

避難が心配な方へ

医療的ケアを必要とされていて災害時の避難や避難生活に不安を感じている障害者の方は、自治体に問い合わせて個別計画の策定を検討してもらうことも考えてみて下さい。
自力での避難に不安がある視覚障害や車いすの方などは、自治体に調整を依頼して、地域の民生委員や社会福祉協議会、自主防災組織や自治会、福祉事業者等に具体的な避難支援の手段を考えてもよいのではないでしょうか。

例えば「新宿区災害時要援護者支援プラン」(平成24年3月)の場合、「在宅での医療機器使用者並びに自己注射、人工肛門及び吸入など特別な医療処置を行っている被災者」に対しては、「避難所及び二次避難所(福祉避難所)内に別途、処置を行える部屋を設置するなど、特別な配慮が必要な者への対応についての検討を行う」としています。特別な医療物品については、区の「災害時要援護者防災行動マニュアル」を参照し、「各自が日頃から3日分程度は被災時に持ち出せる医療物品を確保しておくよう」求めています。「人工透析を行っている者については、東京都災害時透析医療ネットワークを活用する」としています。
人工呼吸器使用者については、「避難所での対応が困難なことから、日頃より対象者の台帳を作成し関係機関において共有するとともに、災害時個別支援計画の策定に向けた検討を行い、被災時の対応について決めておく」こと、「また人工呼吸器使用者は、「災害時要援護者防災行動マニュアル」や「難病等で在宅人工呼吸器などを使用している方へ〜災害時の手引き」(東京都福祉保健局平成20年3月)を活用し、日頃から停電時に備えたバッテリーの確保などに努める」ほか、「避難所に二次避難所(福祉避難所)機能を併設した場合には、災害時要援護者の状態に応じた、ケアも」考えるとしています。

また「新宿区地域防災計画」(平成26年度修正)では、避難所等での「在宅難病患者への対応」として区が、「在宅難病患者の状況把握に努め」、「在宅人工呼吸器使用者への対応」については「区(「災害時個別支援計画」で定めた安否確認を行う機関)は「災害時人工呼吸器使用者リスト」を基に在宅人工呼吸器使用者の安否確認を行う」ことになっています。「被害状況、医療機関の開設状況等の情報を提供するとともに、できるだけ在宅療養が継続できるよう支援」し、「「災害時個別支援計画」による支援が困難な場合は都へ支援を要請」します。「透析患者等に対しては、都福祉保健局が日本透析医会等との連携により、透析医療機関の被災の状況、透析医療の可否について情報を収集し、関係機関に情報を提供することとなって」おり、「区は在宅透析患者の状況把握に努め」、「被災状況に応じ、水、医薬品等の供給、患者搬送について関係機関と調整」します。

お住まいの地域の地域防災計画は地域防災計画データベース(消防庁)で調べられます

2017年2月28日

区政・市政(葛飾区、新宿区、川崎市)における災害時要援護者支援の例

大関智也、丹羽太一、冨田佳樹

このページを作っているREASEスタッフの私たち3名(大関、冨田、丹羽)は、全員が車イスユーザーで、自宅で勤務をしています。災害発生時に自宅にいる可能性がとても高いのですが、発災時に自分がどんな行動をとればよいのか、きちんと把握できていませんでした。

大関は葛飾区、冨田は川崎市、丹羽は新宿区に住んでいます。私たちは各自、自分が住まう自治体では、私たちのような災害弱者の支援についてどのような施策がとられているのか、各自治体の担当部署に文書で質問書を送り、確認してみました。

葛飾区、新宿区、川崎市の災害時要援護者支援の一覧表(2017年)
要援護者人数 避難住民数のうちの要援護者人数や内訳は計上せず
区では避難行動要支援者名簿を作成しており、平常時から警察署と消防署に提供
個人情報の外部提供に同意をされた避難行動要支援者の方の名簿は、希望する自治町会にも提供
要援護者支援要員 要援護者の支援にあたるヘルパーの必要人数は、計上せず
災害時に確保できると想定しているヘルパーの人数は計上せず
安否確認・避難方法 災害が発生した際には、避難行動に携わる団体に対して本人同意の有無に関わらず名簿を提供
聴覚障害・視覚障害によって身体障害者手帳を所持し、希望する方には区から直接、電話またはFAXで避難情報を伝達するので、区からの情報に従って避難行動
名簿は防災市民組織である自治町会に提供し、災害時において名簿を活用した支援方法の参考として、自治町会に名簿を提供する際には、名簿活用の手引きも一緒に配布
災害時には地域の共助による支援が重要であることから、平時から要援護者と地域の支援者との顔の見える関係づくり等について、推奨
障害のある方が支援を求める際に活用するヘルプカードについても紹介
二次避難所 高齢者・障害者の社会福祉施設と協定を締結しており、発災から数日後にニーズを把握し、施設の受入可否の状況等を勘案したうえで、開設するため、発災後はまずは第一順位の避難所に避難する
二次避難所の対応 福祉避難所(第二順位避難所)のリストは地域防災計画に記載をしており、地域防災計画は区公式ホームページでも公開
障害の種類ごとに収容する福祉避難所を分けることは想定せず
二次避難所の運営 福祉避難所の運営に関する具体的な計画は定めていないが、避難所開設・運営訓練を実施している福祉避難所指定施設もあり
一時避難所の
ユニバーサルデザイン化
第一順位の避難所である小・中学校については、現状では仮設のスロープ等で対応しているが、校舎の建替えの際にはバリアフリー化を行っていく
当事者参加 障害者団体の方は、防災会議の委員には入っていない
区の防災に関する協議会等にも、障害者団体の方は委員に入っていないが、障害者団体とは意見交換を行っている
要援護者人数 災害時要援護者名簿(対象者名簿):平成28年12月1日現在9188名の要支援者が登録
災害時要援護者名簿(申請方式名簿):平成28年12月1日現在で2920名が登録
災害時要援護者名簿(対象者名簿)については、平時は危機管理課が保有し、発災時に区内関係部署や警察・消防に配布
その他の支援者等への提供の仕組みづくりは今後の課題
災害時要援護者名簿(申請方式名簿)の情報は危機管理課と地域福祉課が保有し、庁内では福祉部の他の部署や健康部、地域の特別出張所が共有
民生委員や自主防災組織にも毎年二回の更新のたびに、名簿を配布して情報を共有
要援護者支援要員 民生委員・児童委員や防災区民組織については、災害時要援護者名簿等により平常時から対象者を把握し、災害時には安否確認の内容を区へ報告し、情報を集約
安否確認・避難方法 民生委員・児童委員については、「災害時対応マニュアル」を作成、その中で具体的な手順等を定めている
二次避難所 日中発災した場合は、障害者が利用している生活介護のデイサービス事業所や福祉作業所などを、そのまま障害者の二次避難所(福祉避難所)とする。
日曜・祝日や夜間等、事業を実施していない時間帯での発災の場合は、災対福祉部障害者対策班と指定管理者が協定に基づき二次避難所(福祉避難所)を開設する。 —区災害時要援護者支援プラン
二次避難所の対応 学校等一次避難所については、障害の種類による分類はしていないが、福祉避難所については避難所ごとに、その施設の特性及び障害の種類に応じた避難対象者を定めている
人工呼吸器使用者の方については、個別支援計画の中で近隣の避難所等について記載
二次避難所の運営 区立障害者福祉施設、区立高齢者福祉施設等については、指定管理者との間で災害時の協定を締結しており、協定には災害時には福祉避難所として開設・運営する旨が盛り込まれている
民間事業者については、災害時に高齢者福祉施設等を福祉避難所として開設し、施設の特性に応じて避難者を受け入れできる様、民間事業者との間で福祉避難所に関する協定締結を進めている
一時避難所の
ユニバーサルデザイン化
二次避難所開設までの間に、要配慮者が一次避難所で過ごしやすい環境を整備することを避難所運営管理マニュアルで掲げている
その例として、避難所の一階を要配慮者用スペースとして優先的に使ってもらうこと、災害時要援護者名簿を活用して安否確認を行い正確な人数を把握することなどが挙げられる
トイレについては、車いすの人でも中に入って使用できる災害用トイレ(ベンチャートイレ)を各一次避難所で備えている
当事者参加 「新宿区地域防災計画」「災害時要援護者対策関係機関連絡会」「避難所運営管理協議会」いずれの会議についても、要支援者が参加している状況を確認していない
要援護者人数 要援護者人数については、「川崎市地震被害想定調査」の調査結果に反映せず
平成29年度4月28日現在で、災害時要援護者避難支援制度への登録者は6269人
事前に支援組織への個人情報を提供する場合には、同意を得る必要
要援護者支援要員 災害時に自力で避難することが困難な災害時要援護者の方々から名簿登録へ申込み、地域の支援組織に名簿を提供し、地域において共助(互助)による避難支援体制づくりを行なっている
支援組織は主に、自主防災組織、町内会や自治会が協力
安否確認・避難方法 支援組織(支援者)による、戸別訪問を想定
「災害時要援護者避難支援制度」に登録
支援組織と日ごろから連絡方法や避難方法などを話し合って、必要な支援を受けながら移動
二次避難所となる施設の開設状況や受け入れ体制を区役所等で確認する必要があり、受け入れ可能と連絡を受けてから移動する
協定を締結している最寄りの二次避難所は把握しているが、災害時に二次避難所となる施設に安全点検を行ってから受け入れることとなるので、必ずしも最寄りの施設に入れない場合もあり
二次避難所 協定に基づき、安全確保や区役所職員の配置等を行なった後に開設する
避難スペースとしては、通常業務を行う上で、支障のない範囲で施設管理者に対応を委託することも可能
二次避難所において、衝立などを用いて個別に区画スペースを確保する
二次避難所の対応 可能な限り、高齢者施設には高齢者の方を、障害者施設には障害者の方を移送する等できる限り避難者の状態にあった施設へ避難できるよう考慮するが、災害の規模や被災状況によって変わることは想定される
二次避難所の運営 二次避難所の運営については、区役所職員で行うこととしているが、場合によっては、一人で複数の避難所を持ちまわることも想定
看護介護職員については、他都市からの応援などの受援体制にて人員を確保することを想定
一時避難所の
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記載なし
当事者参加 各区で開催されている二次避難所施設連絡会議は、区内の二次避難所施設や、社会福祉協議会、地域包括支援センター等の方々が出席
なお、区によって出席される方にばらつきがあり、すべての区で上記の方々が会議に参加されているわけではない