2018年3月14日

葛飾区議・村松勝康さんへのインタビュー

大関智也

REASEスタッフ大関の居住する葛飾区には、車イスユーザーの区議会議員さんがいらっしゃいます。村松勝康さんという方です。

私たちは、区役所に村松さんを訪ね、区の災害時要援護者支援施策について、疑問に思う点、また区議の意見などを、聞いてみました。 施策についての細かい部分は、区の担当部署(障害福祉課、防災課)の職員さんが答えてくださいました。

インタビューは2017年5月に実施しました。
5月葛飾区インタビュー・村松区議
5月葛飾区インタビュー・風景写真4
5月葛飾区インタビュー・集合写真

区議会議員・村松勝康さん、防災課
Q01

一般に向けた災害時行動マニュアルはありますが、要援護者に特化したものはありません。そのため被災時にどのような行動を取るべきかわからないことが数多くあります。
そのことについてどうお考えでしょうか?

A

お答えする前に、私もその要援護者の当事者です。みなさんの気持ちは十分知っているつもりです。また先ほど課長さんからもいろんな説明ありましたけれども、私は障害者の対策では、就労支援、災害対策、要援護者対策、等々について、それを自分のライフワークとしてやってきました。その上で、行政の方々も、バリアフリーについては村松だと、災害の問題については村松だと、というぐらいになるまでやってきたのですが、なかなかすぐに答は出てきませんがそれにめげずやってきました。それで今お話がありましたように、一般論になりますけれど、避難勧告が発令された場合は当然安全な場所に移動する、行動する。ただ私どもが全員皆さんといっしょにできるかっていうとそこに大きな問題がある。まずは家族や地域の皆さんと、一緒に行動することが大事だと思います。東日本大震災の経験から、共に行動できるような体制づくりの必要性を痛感しました。ただ、地震で延焼の恐れがなければ自宅で待機するのが一番いいと思っています。(村松)

かつしか私の便利帳」という区役所のサービス内容ですとかお問い合わせ先が書いてあるもの発行しておりまして、葛飾区民の方に全戸配布しています。それの巻頭部分に防災特集ページを40ページくらい掲載しておりまして、その中にも災害が起きたらどのような避難行動をとっていただければいいかということを紹介しておりますので、障害をお持ちの方も読んでいただければ、地震が起きたら自分はどんな行動をとればいいのかな、これを読んでいただければ、考えていただけるのかなと、区としては考えております。(防災課)

Q02

主に学校などが指定されている一時避難所は古い建物が多く、バリアフリー化が十分に行われていないものがかなりあると思われます。私(大関)も出身の小学校に今でも選挙の時に行くことがあるのですが、かなり昔に建てられたため、スロープがものすごくきつかったり。かなり使いづらいなと思っています。これについてはどのようにお考えでしょうか。

A

近所の小学校は体育館が3階にあります。入学式や卒業式には地域代表で行くのですが、非常に困難です。今学校のバリアフリー化の問題でありますが、地震が発生したらみんなまず体育館に避難すると思います。私も車いすで行ったのですが、まず行かれないのです。今本区の学校では改築改修をしていますが、エレベーターを設置するまではかなりの時間がかかり、大きな課題だと思います。ただ、今耐震化されていますので、そこに我々が避難してもまずほとんど大丈夫だと考えます。しかしそこに避難できない人もいるので、そういう方は福祉避難所に行くことで、区のほうは対処することになっています。

私が議員であるうちに学校にエレベーターをつけなければと思うので、それはこれからも主張して参ります。それから学校にスロープをつけるように毎回議会で言うのですが、逆に邪魔だってはずす学校があるんです。倉庫にしまったままです。めげずにがんばります。意識の向上に努めて参ります。(村松)

Q03

避難所の運営管理のことについてですが、たとえば実際に福祉施設が指定管理だとわかるのですが、先ほどのお話だと指定管理は使われていない。そうすると福祉避難所はどこが主体でどういう風に運営されるのですか。

A

区では61箇所福祉避難所を指定しておりまして、そのうち民間の施設が31箇所で特別養護老人ホームですとか、通所型の障害施設などと協定を締結して、避難所指定しています。そういう施設は普段から障害をお持ちの方と接してらっしゃいますので、どういうケアをすればいいかについては十分熟知されていると思いますし、またどのように運営していけばいいかというのはもちろんこの災害対策本部とも連携しますし、区の方からも職員を福祉避難所にも派遣して運営にあたってまいると思います。

25箇所の区の施設としましては、東京都の特別支援学校の高校ですとか、いこい交流館という地域の方が普段会議室として使用されるようなところで、和室もあったりして比較的バリアフリーにも対応しているような施設を指定しています。(防災課)

Q04

二次避難所について具体的な運営計画がなく、要援護者が置き去りにされる恐れがあると思いますが、いかがでしょうか。

A

私も心配しておりますが、区の方でも一所懸命やっているのは知っています。
まず避難所の運営状況は、災害対策本部で把握しており、適正な運営の指示を行っています。具体的な支援例としては、まず保健師さんによる避難所巡回健康相談や、また在宅で生活する要介護者も社会的に孤立させずに必要な支援を受けられるように、巡回や電話相談を受けるということで取り決めております。決めたことを全てできるというわけではないかもしれませんが、できる限りやっていただくことになっています。(村松)

できるだけ社会的に孤立してしまう人がないように保健師による巡回相談、避難所もやりますし、あと在宅でもできる限り実施しますし、町会の方にも協力を呼びかけして避難行動要支援者名簿なども活用し、在宅で生活されている避難行動要支援者の方たちを名簿に基づいて是非家庭訪問して困ったことがないか聞き取っていただけないかとお願いしていくと思います。
町会に入っていない方であっても、その町会の区域にお住まいの方は名簿に掲載して町会に提供するようにしております。(防災課)

Q05

個人情報保護法との関係もありますが、要援護者の登録が徹底されているか疑問があります。これについてはどのようにお考えでしょうか?

A

区のほうでは名簿対象者の方に、年1回お手紙を送っておりまして、名簿自体も年1回更新しているようにして、対象者の方に漏れがないようにしています。

平常時はあくまで本人同意された方だけの情報提供となっています。いざ発災しますと本人様の命に関わりますので、本人の同意あるなしに関わらず支援をしてくれる団体に提供することになっています。
仮に本人様が忘れていたとしても、実際に災害が起きた場合は、必要な情報は自動的に提供されることになります。(防災課)

Q06

災害時に多数の要援護者が避難する際には多数のヘルパーが必要になると思われますが、そのヘルパーの確保について具体的に考えられていないようです。災害については、地震と水害と主に2つあると思うのですが、地震の場合はいつ来るか予測不可能ですが、水害についてはある程度、実際に発生するまでに時間がありますので、そういう人たちが必要になるということはある程度、その時点でいろいろ連絡して準備するとかはできないのでしょうか?

A

葛飾区の場合、洪水のとき避難勧告をだすようなときには、実際に洪水が起きる半日くらい前にかなり早い段階で勧告を出すようにはします。特に障害をお持ちの方などにはリードタイムを使って「避難してください」と早い段階から呼びかけますが、実際にお体が不自由で逃げたいけれど逃げる足がないことも考えられます。葛飾区の場合、区全体が平坦な土地ですので、荒川や江戸川が氾濫するような場合はほぼ区内全域が浸水してしまうような状況ですので、避難する場合、数キロの距離を移動しなければいけなくなると思われます。その場合公共交通機関を使えないような方でしたら、車両を使って避難しなければいけないのですが、おうちに自家用車があるような方であれば、家族の協力なども得ておうちから車で避難していただきたいのですが、車がない方については、東京都のほうで介護の福祉タクシー事業者と協定を結んでおりますので、それと東京都の都バスなどもあわせて、車両を確保することになっております。区のほうから東京都のほうに、お体が不自由な方を避難させるための車両を用意してください、と要請して、東京都のほうから調達した車両を区の例えば小中学校などで待機してもらって、そこから障害をお持ちの方を葛飾区外へ避難させるということは考えてあります。ただ実際に区内に多くいらっしゃる障害者の方全員を車両で避難させるのはおそらく間に合わないとは思うので、その場合には避難所に、一時的に浸水した町に取り残されてしまうのですが、とりあえず緊急的に命を守るために小中学校にとどまっていただいて、その小中学校に自衛隊や消防の救助を優先的に来ていただきたいと考えております。(防災課)

Q07

葛飾区の防災計画にはおそらく障害者等の当事者が参加していないため、当事者視点のものがほとんどないように思うのですが、それはどうお考えでしょうか。

A

先ほど課長さんともお話ししたのですけど、今後の課題だと思っています。やはり実際の声を聞いて、反映させなきゃダメなんじゃないですか、と申しましたので、それは反映されていくと思います。また、各障害者団体等とも、区は介護保険制度、災害についても話をしておりますし、地域防災計画書にもいろいろ載っていますので、計画に載ってやっていただけると思います。(村松)

Q08

現在葛飾区には45万7千人余り(2017年1月現在、葛飾区HPより)の人が住んでいますが、水害(江戸川氾濫の場合)で最大36万7千人余りの人に避難勧告を出すと想定されています。この場合、葛飾区の大半が浸水して避難所も多くが使えなくなるのではないかと考えますが、これだけの人を受け入れられるだけの避難所や避難物資はあるのでしょうか。

A

全ての避難者を受け入れる体制はまず不可能だと思います。その代わり葛飾区では、近隣区や千葉県市川市、松戸市と協定を結んでいるのでそちらに避難することになると思います。避難が困難な人は車両を使うことも考えられます。(村松)

荒川や江戸川が氾濫するときは葛飾区だけが浸水するわけでなくほかの自治体も浸水してしまって、そのときは100万人200万人規模の人が避難しなければいけないという状況になるので、それだけの数の避難所を行政だけで確保するのは非常に困難です。そこで、浸水していない地域、東京の西の方、千葉、埼玉の方に、親戚、友人、勤め先など、何らかのつながりのある場所に避難していただきたいと区では考えていて、区民の方にも23区の西側の方にご親戚やご友人等がいたら、区の避難勧告などに従っていただいて、そういったご親戚宅などに避難をしていただくということを考えております。物資につきましては、浸水してしまった地域はもちろん物資入手困難となるのですが、浸水していない地域からの物流は途絶えないと思いますし、地震のときと異なって、大洪水が起きたとしましても、浸水しない地域は物資比較的入手しやすいので、そこまで物資入手に困ることはないのかなと思っています。(防災課)

Q09

最後の質問になるのですが、実際、地震や水害等で被災した場合、区議としてどのような活動ができるかとお考えでしょうか?

A

まず、常日頃、地域の方と交流できるような自分であるべきだと考えています。孤立してしまって誰とも交流がないということになりますと、災害にあっても、そういう人がいたなということだけで終わってしまうかもしれないので、そういう自覚が非常に大事だと思います。(村松)

区議は住民の方と一番近いところにあると思いますので、発災後の避難所の運営にしても、職員が見た避難所運営とは違う視点で言ってもらえると思います。熊本地震が起きた時に応援で熊本に行ったのですが、そのときも熊本市議会議員の方が避難所、なってない、市長にちゃんと言わなきゃとおっしゃっていたので、区議の方も、もし葛飾区に災害が起きた時に、避難所の運営の在り方や、住民の方がどういう風に困ってるかというのを、区に伝えていただくという役割が期待されるのかなと思います。うちとしても職員を通しての報告以外にも現場で何が起きているのかの生の声を、違う視点で知ることができるようになるのかなと思います。(防災課)